恋愛体質
 のど飴は残念ながら私の心は潤したが肝心な喉には効き目がなさそうだった。

 咳は一向に静まらず、相変わらず車内に私の咳が響いていた。
 せっかくの厚意を無駄にしているようで心苦しかった。

 (あと一駅・・・)

 あと一駅で終点だった。途中駅で乗降があるものの終点まで車内は混雑している状態だ。

 もう少しで駅に着くというあたりでまた咳込みが始まった。

 片手で口元をハンカチで押さえながらもう片方の手で吊り革にぶら下がり体を折った。

「ゴォン、ゴン」

 肺から血が出てきそうな気がした。
 昨晩は確かに寝ている間に喉が痛い感じがした。風邪のひき始めかもしれなかった。

 咳は止まらないがスーッとして若干は気持ちがいいので、さっきののど飴をもう一つ口に入れようとポケットから取り出して包装紙を取ろうとした時だった。

 背中からつつかれて振り向いた。
 さっきの「Mr.のど飴」だった。
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