恋愛体質
 いつもより若干早く出たおかげで前日と同じ電車に乗れた。今日は焦って飛び乗ったわけでもないし、咳が出た場合に備えて薬も持ってきた。

 この前のプリンスがいたドアの辺りに乗ってみた。車内をキョロキョロと見回してみたが残念ながらプリンスを見つけることは出来なかった。

 (いるわけないか・・・)

 見つけたところで何か出来るというわけではない。でもせめてお礼くらいは言えるかもしれない。

 それに、この殺伐とした朝の通勤列車の中に彼のような善意の人が乗っているというだけでも心が温まるというものだ。

 とうとう終点で降りるまでプリンスを見つけることは出来なかった。

 (しばらくここに乗ってみよう。いつか会えるかもしれないし・・・)

 そう思いながら人の流れに従って会社までの道をノロノロと歩いた。
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