恋愛体質
「ちょっといい?10分。」

 朝礼のあとで荒川さんに呼ばれた。

「あ、はい。」

 私は荒川さんの後についてミーティングブースに行った。

 ちょうど販促課の矢崎課長と私より2年先輩の男性社員の佐藤さんも来たところだった。

 私は軽く黙礼しながら席に着いた。矢崎課長が口を開いた。

「昨日、伊藤課長から話は聞いているよね?」

「はい。」

 頷きながら緊張した声で答えた。
 販促課は同じフロアで私の現所属している手配課とは緊密な繋がりがあるが、課長と直接話したことはほとんどなかった。すれ違って挨拶をする程度。

 年齢は30歳位かもう少し上かという位。体育会系な印象なのはスーツを着ていてもわかるがっちりした体格のせいか、全体的に醸している「熱さ」のせいだろうか。

「正式には来月から異動ということなんだけれど、年末のカレンダー配りをちょっと早いけどそろそろ始めてるんで、いい機会だからどうかと思ってね。」

 矢崎課長はここで一息ついた。

「荒川さん、どう?やっぱり繁忙期だし無理かな。」

 課長は荒川さんに打診した。

「そうですね。毎日ですか?」

 荒川さんのほうが課長に聞いた。

「うん。どうだろ。難しければもちろん そちらの都合に合わせるけどね。」

「そうですね。やっぱり月曜とか休み明けは厳しいです。応援が欲しいくらいですから。あとはメンバーの出づらを見てみないと。」

 荒川さんが言った。
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