恋愛体質
「どう?すぐ調整出来そう?」

 課長は荒川さんに向かって聞いた。

「はい。シフト見ればすぐ出来ますよ。」

 荒川さんが気安く答えた。

 私なんていてもいなくてもたいして影響はないんだろう。そんなことくらい、いやというほど自覚していた。

「じゃあ佐藤、時間平気なら今スケジュール詰めちゃって。僕はちょっと失礼するから。」

 課長が佐藤さんに言いながら席を立ちかけた。

「じゃあ荒川さん、よろしくね。」

「はい。わかりました。シフト持ってくる。」

 荒川さんも答えながら席を立った。私はすがるような目で荒川さんを追った。ここに置いていかないでと。

 諦めて佐藤さんの方に向き直り頭を下げた。

「よろしくお願いします。」

 ぼそっと言った。

「何?」

 佐藤さんは自分のスケジュールから目を上げてジロリと私を見た。

「聞こえない。そんなんじゃ何言ってんのか全くわかんないよ。」

「すみません。」

 私はまたぼそっと言った。怖じけづいて声だって出ないのだ。

 だって課長は面倒見がいいなんて言っていたけれど手配課では佐藤さんは怖いことで知られていたから。

 (よりによって佐藤さんにつくことになるなんて・・・ついてない。)

 心のうちを見透かされたようにまた佐藤さんが顔を上げて私を見た。

「電話だって営業だろ?発声なんてそっちの方が専門だろうよ。」

「すみません。」

 私は俯いたまま、はっきりと言ってみた。
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