恋愛体質
 佐藤さんのデスクの脇でバッグとコートを手に待っていた。

「あれ?もう今日から?」

 同期の木村君が脇を通りながら私に聞いた。

「そうみたい。」

 私は苦笑いのような曖昧な笑みを浮かべながら小さな声で言った。

「ああ。木村と同期か。」

 佐藤さんが気がついたという風に言った。

「お待たせ。じゃ行くよ。」

 私は慌てて佐藤さんの後についてエレベーターホールに向かった。

 佐藤さんは細身で長身。顔立ちはこれといった欠点は見当たらないがイケメンでもない。それ以前にどこか神経質で暗い感じがした。

 全体的に営業というより理系といった雰囲気を醸していた。自分から進んで話すタイプでは全くなさそうだった。

 こうしてエレベーターを待つ間も気詰まりな沈黙で、それだけでも今日という1日が長く陰鬱な時間に思えてならなかった。

「あの、よろしくお願いします。」

 私はおずおずと言った。

「あ。うん。こちらこそ。」

 佐藤さんは一瞬だけ私の方をちらりと一瞥するとエレベーターに乗り込んだ。
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