恋愛体質
　狭い店内に坐り心地の良くない木の椅子が向かい合わせに置かれたテーブルがいくつかとカウンターがあった。

　私達は空いていたテーブルの１つに向かい合わせに座った。

「ざるそば大盛り。」

「天ぷらそばをください。」

　店内は一人の客が多い。
　ほとんど皆同じように見えるスーツを着たサラリーマンばかりだ。

　黙々と蕎麦を啜っているか携帯を片手に上の空の様子で流し込むように食べている人もいる。

　読んでいた新聞を戻して「ごちそうさま」と言いながら会計に立っていく人もいた。

　ふと視線を戻すと佐藤さんが私の方を見ていた。

「普段こんなとこ入らない？」

「いえ。そんなことないですけど。私たち女子とランチの風景が違うんだなって思って。」

「うん。」

　佐藤さんは同意するように頷いた。

「今まではどうしてたの？昼。」

　佐藤さんが私に聞いた。

「だいたいは休憩室ですよ。コンビニとかほか弁。あんまり食べに行くとこないじゃないですか？すぐ近くには。」

「そうだね。」

「時間なくなっちゃうから。」

　私は言った。

「同じ会社にいてもやっぱりランチの風景って違うんだなぁって思ったんですよ。」

「まあね。」
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