恋愛体質
 絆創膏も買って出てきた。

「買いました。」

 歩きながら絆創膏を佐藤さんに見せた。

「貼る?」

「もうすぐ会社だから会社着いてからで大丈夫です。」

「明日もあるけど大丈夫かな。」

 佐藤さんが言った。

「明日も・・・ですよね。」

「うん。」

 私は下ろしたてではないがそれほど履き込んでもいないパンプスを履いていた。私の靴をちらっと見てから佐藤さんは言った。

「楽な靴がいいよ。」

「そうですね。買わなきゃ。」

「明日も歩くよ。」

「はい。」

 会社に着いてから荒川さんと保坂さんに報告した。

「吉田さん、いた?」

 保坂さんが聞いた。

「吉田さん?ですか?」

「新宿の。あれ?渋谷に異動されたんだっけ?キーパーソンだよ。」

「ああ。会いました。確か。」

「確かって。覚えてないの?」

「初対面の人ばっかりで誰が誰だか・・・」

 私はしどろもどろの言い訳で逃げた。

「吉田さんは初対面じゃないはず。高橋さんも商品説明会の時にご挨拶してるはずだけど。私、紹介した記憶あるもの。」

「そうでしたっけ?」

「まったく。きちんとセールスしてこなきゃダメじゃない。」

「スイマセン。」

「ま、とにかくお疲れ様。今週中にレポート出してね。」

「はい。ありがとうございました。」

 私は自席に戻ってから絆創膏を貼りにトイレに向かった。
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