恋愛体質
 街全体がロマンチックな演出に彩られるこのシーズン。

 私は両手に荷物を抱えて駅へ向かっていた。
 今年のクリスマスは元彼のまーくんと一緒にいられると思っていた。

 嘘。正直に言えば不安だった。
 彼はいつもなんとなく心を見せない風だったから。

「軽い気持ちで付き合いたいんだよ。僕、真剣で重いのってキツイ。今は。」

 私は夢中だったからそんな台詞を聞いてもただ嫌われたくないと思うだけだった。

 それでもあやしい言動があれば嫉妬して追求した。

「昨日は何で会えなくなったの?何度もLINEしたのに。何してたの?」

「バイト。」

「昨日はバイトないって言ってたじゃん。」

「変わったんだよ。」

「私、バイト先も行ったんだよ。」

 話の雲行きが怪しくなると彼は猫のように擦り寄ってきて私に触れた。

 私は疑いが晴れずすっきりしないまま、甘い魔法にかけられ彼の魔力に陶酔して忘れた。

 彼の部屋で激しく愛し合った後、散らかった服を着ているうちにふとテレビ台の下の方に置かれたプリクラが目についた。

 私が手に取ってみると脇からスッと彼が取って隠した。
 一瞬、私よりずっと綺麗な女と2人で笑っている彼が見えた。
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