恋愛体質
「あら。いいじゃない。」

母は服を見て言った。

「私、営業になるの。今度。」

私は靴を履いてみながら言った。風呂上がりで皮膚が柔らかく、靴擦れの部分が擦れた。

薬箱から絆創膏を出して貼った。足にさっき買ったシートも貼った。

「営業なんて出来るの?」

母は呑気そうに聞いた。

「わかんない。もう今日から始めてて、先輩と一緒に回ったの。足がぱんぱん。」

「お疲れ様。でも痩せるわよ。頑張って。」

母は靴も見たいと言ったので渡した。

「それ、楽なの。明日も歩くみたいだから。」

靴と服を母から受け取って自分の部屋に戻った。服をハンガーにかけてクロゼットにしまい、靴を玄関に置いた。

疲れてクタクタだった。そのままベッドに倒れ込みたいのをなんとか気力を振り絞って歯磨きとドライヤーをしに洗面所に行った。

(明日何着て行こう・・・)

私はこっそり姉の部屋のクロゼットを物色した。姉はまだ帰宅していなかった。

姉とは背格好はほとんど変わらない。いいのがあれば拝借するつもりだった。

(スーツ、スーツ)

クロゼットの端の方に最近はあまり着ていないようなパンツスーツがあった。

(これでいいか)

私はそれを借りることにして自分の部屋に持っていった。

部屋のフックにそれをかけてベッドに入った。すぐに溶けるような眠りに入っていった。
< 63 / 113 >

この作品をシェア

pagetop