恋愛体質
「いってきます。」

7時30分より少し前くらいに家を出た。
エントランスを出てから成沢の携帯にかけてみた。何回呼んでも出なかった。1度切りもう1度かけるとやっとつながった。

「今、家出たとこ。」

「うん。わかった。」

「部屋とかわかんないし出て来て。あと5分くらいで着くから。」

なんだかよくはわからないまま成沢のアパートの前まで行った。

「おはよう。」

成沢が元気に言った。

「おはよう。」

私はお世辞にも「愛想よい」とは言えないトーンで言った。

「なんかちょっと感じ違わない?」

成沢が私の顔を覗いてから頭から爪先まで眺めて言った。

「そう?早く行こう。」

私は駅に向かってさっさと歩き出した。

「気合い入れて来たんだろ。本当は。」

成沢は並ぶと私より頭1つ分大きかった。成沢と話すには見上げるような姿勢になる。

「なんで?」

私は成沢の言っている意味が全然わからなかった。

「俺と会うからに決まってんじゃん。」

私はまじまじと成沢の顔を見た。冗談を言っているわけではないらしい。

だいいち、成沢みたいなタイプがこんな台詞を言っても冗談にならない。

私は何か言うのを諦めて無視して歩き出した。
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