恋愛体質
「これなんだけどさ、このオプションをこれつけられるの?」

鶴田さんがパンフレットを指差しながら聞いた。

佐藤さんが私の背中を軽く押してパンフレットを見るように促した。

「ああ、これですか。」

多分問題ないと思われたが設定外のため企画の承認が必要になりそうだ。

「つけられると思いますが企画の承認が必要かと思われるので確認致します。」

私は言った。

「なんだよ、歯切れが悪いなぁ。出来るの?出来ないの?どっちよ?」

鶴田さんに試されている気がした。いつもの電話の通りだ。

「企画に確認してから回答致します。」

私は言った。

「なんだよ、コンタクトセンターの人だからすぐわかるかと思ったのに。わかんないのか。」

「申し訳ありません。今確認してみます。」

鶴田さんの嫌味を聞き流して謝った。勝手に出来ますというわけにもいかない。

「いいよ、いいよ。自分で電話して聞くから。」

鶴田さんはパンフレットに付箋をつけて閉じた。

「自社商品でしょうが。」

皮肉たっぷりの口調で私と佐藤さんに言う。

「あんた達扱ってんのは自社商品だけでしょっての。うちみたいにいろんな会社の商品取り扱ってんじゃないんだからもうちょっと勉強したら?こういう質問来るって想定出来ないの?ほかからも来るでしょ?」

反論の余地がなかった。

「自社商品でしょ。勉強しなさいよ。」

「はい。おっしゃる通りです。申し訳ありません。」

私の代わりに佐藤さんが言った。
< 81 / 113 >

この作品をシェア

pagetop