恋愛体質
「優希は絶対あの彼に落ちると思ってたよ。あの時から。」

「だから落ちてないって。朝起こして一緒に来てるだけ。なんとも思ってないよ。」

自分ではなんとも思っていないつもりだった。実際、確かにかっこいいとは思ったけれど私にしては珍しく防御線が機能していると思っていた。

なんといっても立て続けにイケメンに痛い思いをさせられたのだ。元カレとの悲惨な結末からまだ2、3ヶ月しか経っていない。

(いくらかっこいいからって目がハートマークになってはいけない。ピンク色の霞みがかかってはいけない。
簡単に心も体も捧げるのはやめようと誓ったばかりじゃない。
振り回されるのはやめようって誓ったでしょ。
慎重にしたたかに相手を見極めるのよ。)

改めて自分に誓った。

「朝起こして?何それ?」

奈津美が私の方へ視線を向けるのがわかった。私はわざと奈津美の方を見ないようにした。

「え、だからモーニングコール頼まれて。」

「毎朝?」

「毎朝。」

「ふぅん。」

私は食べちゃダメと言われているお菓子をママの目を盗んでこっそり持っていこうとしている子供のように奈津美の様子をそっと窺った。

奈津美はグラスからワインを飲んだ。テイスティングでもしているようにじっくりと。

「ふぅん。」

奈津美がまた言った。
< 89 / 113 >

この作品をシェア

pagetop