恋愛体質
「眠い。」

私はまた言った。もう少しの辛抱だ。降車駅まであと2つ。とは言え一駅の距離は長い。

ただでさえ成沢は口数が多いほうではない。どちらかと言えば無口なほうだ。

慣れてきたから緊張はしないが話しかけてくれないとますます眠くなるというものだ。

成沢はちょっと気難しいような顔で車窓の外を流れていく住宅地の明かりを見ていた。

私は窓ガラスに映ったそんな成沢の顔をなんとなしに眺めていた。

窓ガラスに映るモノクロームの映像でも成沢は「いい男」だった。確かにかっこいいなと改めて感じた。

「眠くないの?」

私は聞いた。

「別に。眠くない。」

相変わらず何事か考え事に没頭しているような様子で成沢は淡々と答えた。

スマホが振動したので取り出してみた。奈津美だった。今年一年ありがとうという内容のLINEだった。

私も同じような内容を返した。

成沢もスマホを見ていた。何もしないでただしばらく眺めてからまたしまった。

それからしばらくして降車駅に着いた。
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