恋愛体質
成沢はアパート前の道の曲がり角を通り過ぎた。

「送ってく。」

「大丈夫だってば。」

「いいから。」

結局会話らしい会話もしないままマンションのエントランスに着いた。

「ありがとう。じゃあまた来年。」

私は成沢に言った。

「明日」

成沢が何か言いかけた。

「何?」

「明日なんか用事ある?」

「別に。買い物でも行こうかと思ってるけど。」

私は答えた。

「何買うの?」

「わかんない。服とか。なんか。」

「それ後にできない?」

「出来なくもないけど。なんで?」

「つきあって。明日。」

成沢が言った。

「明日出かけよう。」

「いいけど。別に。でもどこに行くの?」

「ちょっと。わかんないけどドライブ。」

「いいよ。」

内心ちょっとうれしかった。楽しそうだ。

「9時でいい?9時にここまで迎えに来るから。」

「うん。わかった。じゃあ明日ね。」

「7時半頃起こして。起きてると思うけど一応。」

「やっぱり私が起こすのか。わかった。おやすみ。」

私がエントランスに入るのを見届けてから成沢は戻っていった。
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