いつも側にいてくれたね
「夏芽、泣いてごめん。夏芽にそんな風に言ってもらえて嬉しかった。ありがとう、夏芽」
「ううん、ありがとうを言わなきゃならないのは私の方だよ」
「夏芽、僕ね。本当は・・・」
直生は何か私に言い難そうにしている。
「うん」
「本当はね・・・時間が。 いや、なんでもない」
「どうしたの、直生。私になんでも話して欲しい。時間って、なに?」
「ううん、なんでもないよ。夏芽には元気でいて欲しいなって。もう絶対に危険な目に遭って欲しくない」
「うん、約束するね。もう直生に心配掛けないようにするよ。でも、これからも直生を頼ってもいい?」
「もちろんだよ」
直生は私の目線まで屈んで、擦りむいた私の頬を優しく触った。
「もう夏芽の怪我とか傷とか見たくないんだ。だから僕が最後まで夏芽を守るよ」
その時の直生の目はとても悲しそうで、とても淋しそうだった。
「最後までって、変なこと言うね直生。最後までって、私がおばあちゃんになるまでってこと?」
「そうだね、そうできれば良かったんだけどそうもいかないから。僕が夏芽の近くにいられる限りは、ってこと」
そうだよね。いつもずっと一緒にいられる訳がないもん。
大学に進学したらきっと直生の側にはいられない。
もしかしたら遥生の側にだっていられないかも知れない。
私たち3人が一緒にいられるのは高校を卒業するまでなのかな。
もし直生も遥生と同じ高校へ進学していたら、きっと今みたいにお互いの家を遠慮なく行き来できなくなっていたかも知れない。
いくら生まれた時からの幼馴染でも通う学校が違っていたら、ただのお隣さんになっていたかも知れないんだよね。