いつも側にいてくれたね


「ね、もう一度俺に言ってよ。あの時のお願い」

遥生はそんな意地悪を言う。

ああ悔しい。 

どうして遥生はこんなに私をいじめるの。

それでも私は素直に今の気持ちを遥生に伝えたいと思ったから、遥生の目を真っ直ぐに見て。

「遥生、私浮気なんてしなかったよ。だから・・・あの時の勘違いを、してください」

恥ずかしいけど、絶対に遥生から目を逸らさないんだ。

「えっ。は? 夏芽、え?」

遥生の顔が赤くなるのが分かって。

遥生はその場で頭を抱えてしゃがみ込んでしまった。

なによ、遥生は私とキスなんてしたくないんじゃない。

頑張って言ったのにな。

「夏芽―。あーーっ、もう俺の負けだよ」

遥生がしゃがんだまま訳の分からないことを言ってる。

何を言ったのかちゃんと聞こうと思って私も遥生の前にしゃがんで、

「遥生、なに? 何が負けたの?」

遥生は何も答えてくれないからもう一度名前を呼んでみた。

「ね、遥生。遥生ってば」

遥生の名前を呼んだ瞬間、遥生がしゃがんでいる私を床に押し倒してきた。

「きゃっ、なっ、なにするのよ遥生」

「夏芽、俺もう無理だから。ほんと無理」

私と遥生の顔の距離は10センチも無い。

「遥生はいつも無理って言う。それ言われるの悲し・・・んっ」

遥生との距離が0センチになって。

それはほんの一瞬だった。

私から遥生の顔が離れると、遥生はまっすぐに私を見つめる。

「夏芽、好きだ。苦しいくらい、夏芽のことが好きだ」

遥生は切なそうにそう言うと、再び私にキスを落とした。

私も大好きだよ、遥生。


< 106 / 120 >

この作品をシェア

pagetop