いつも側にいてくれたね
「子供の頃。俺たち崖から落ちなかったか? その時の夢を最近何度も見るんだよ。夢にしてはあまりにもリアルなんだけど、直生はそんな夢は見ないか?」
そう、僕たち双子は昔から同じ夢を見ることが多かった。
それは嬉しいこと、怖いこと、悲しいことを同じに経験しているからなんだろう。
「いや、全くそんな夢は見ないね。遥生はそんな夢の話のことを気にしているの?」
「ああ。なんでか気になるんだよな」
「留学にナーバスになりすぎなんじゃないの? 遥生がそんなんじゃ向こうで夏芽を守れないでしょ」
僕は幼い頃に崖から落ちたことは遥生の夢なんだと思い込ませたかった。
あの時のことは僕以外の記憶から消えているはずなんだ。
「夏芽のことは何があっても俺が守るよ。それは心配ない。俺は夏芽よりも直生が心配なんだよ」
「え? 僕? 僕は遥生たちが無事に帰って来るのを待っているだけだよ。何も心配されるようなことはないけどな」
「そっか。じゃあ俺の夢の話は忘れて」
遥生の記憶が真実に近づいているのかもしれない。
そんなことも僕の時間がすぐそこまで来ているんだと感じる。