いつも側にいてくれたね
男として、女として意識する *夏芽*
入学式から1か月が過ぎた頃、
直生と私は中学から続けているテニス部に入り練習を頑張っていたんだけど。
毎日暗くなるまで練習し、家に帰ると勉強なんて全然できなくて夕飯を食べたらすぐに寝てしまうような生活が続いた。
今日もお風呂に入るのが億劫だなって思いながらベッドでゴロゴロしていたら、部屋の入口から直生の声が聞こえた。
「夏芽、入ってもいい?」
「ん? 直生? どうぞー」
「入るよ」
直生が私の部屋に来るのっていつ以来だろう。
前は頻繁にお互いの家を行き来してたのに。
「直生、どうしたの?」
私は直生が部屋に入ってきてもお構いなしにベッドに寝転がっていた。
「もー、夏芽! ちゃんと服整えてよ。パンツ見えるから!」
「やっ、やだ直生。ちゃんとショートパンツ履いてるもん。びっくりさせないでよね」
「相変わらず色気がないな、夏芽は。もう少し他の女子を見習ったら? そんなんじゃ彼氏できないよ」
まさか直生からそんなことを言われると思っていなかったから、びっくりしてベッドから飛び起きた。
「な、直生! 何言ってるのよ、私に彼氏とかって。変なこと言わないでよ」
「んー、でも夏芽って何気に人気あるんだよ。僕のクラスにも夏芽のこと気になってるって人がいるし」
「ほんとに? そんなの聞いたことないよ。私よりも直生の方がモテるよね。高校に入ってから何人から告白された?」
「えーっと、3人かな。でも知らない子だし全部断った」
「断ったの? 全員?」
「うん。だって僕には夏芽がいるし。彼女は要らないよ」
直生から突然そんな風に言われて、ドキっとした。
「わっ、私はいつだって直生と遥生のそばにいるよ」
「うん、そうだね。ずっと僕たちのところにいてね、夏芽」
直生はいつも優しい口調で話してくれる。
時々、その優しさが直生の本心なのか、気持ちを隠しているのか分からなくなる。