いつも側にいてくれたね
「直生、どの部屋で勉強教えてくれるの?」
「勉強は遥生の部屋でやるから先に行ってて。僕は片づけ手伝ったら行くね」
直生は偉いな。ちゃんとお母さんのお手伝いしてるんだ。
それに比べて私はダメだなぁ。
早く遥生に会いたくて、夕飯終わったら片付けもせずに家を出てきちゃった。
反省しながら遥生の部屋まで行くと、遥生は直生のテキストを広げて問題を見ていた。
「遥生、入るよ」
「ん? ああ。どうぞ」
「遥生の部屋に入るの久ぶり。なんかシンプルになった?」
「たくさん置いてあったフィギュアを片付けたくらいだぞ」
遥生の部屋をぐるっと見回すと、壁に遥生の制服が掛けられていた。
「あっ! 遥生の制服。本当だ、直生のブレザーとデザインが全然違うんだね。私、まだ遥生の制服姿を見てないんだよ。ね、着て見せてよ」
「はぁ、面倒だよ。さっき脱いだばっかだし。それに興味もないくせに」
「そんなことないよ、この制服ってかっこいいから人気あるんでしょ? 遥生似合いそうだし見てみたい」
「ふっ、俺が制服着てるの見たら夏芽が俺に惚れちゃうから、着ない」
「惚れません! いいもん。どうせそのうち見れるもん。遥生のケチ」
「はぁ? ケチってなんだよ。せっかく勉強教えてやろうと思ってたのに。帰れ、夏芽」
「ご、ごめん。謝るから勉強教えて、ねっ」
私は両手を顔の前で合わせて遥生の様子を伺う。
「分かった、もういいよ。ほら夏芽、そこ座って。どの教科やるんだよ」
良かった。
遥生はちゃんと勉強を教えてくれる。
遥生とこんな感じのやり取りをするのも久しぶりで楽しくなっちゃう。
直生とは言い合いになることなんて滅多にないけど、遥生が相手だといつも喧嘩腰の会話になるの。
でも本気の喧嘩じゃないから楽しいんだよね。