いつも側にいてくれたね
小学校入学前の春、高田家と湯川家は山と川に囲まれた自然豊かなキャンプ場へ遊びに来ていた。
食べるよりも遊ぶことに夢中な子供たち3人は誰からともなく駆け出し、鬼ごっこを始めた。
お母さんたちが遠くまで行ってはダメよ、と注意しているのに適当な相づちで答えて、大人たちの目の届かない所まで駆けて行ったんだ。
かけ足の早い遥生がジャンケンで負けて最初の鬼。
鬼のターゲットは少しおっとりしている夏芽と決まっていた。
そして鬼の役目が夏芽に変わると、直生は夏芽が捕まえやすいように手加減して走る。
それを見て遥生は
「直生、手加減したらつまらないよ」
と、いつも直生に文句を言う。
夏芽が鬼になった時、この日はめずらしく遥生は直生のとなりに並んで止まった。
そして夏芽がどっちにタッチするのかを面白がって2人で賭けた。
「いつも僕が夏芽から鬼を貰うからきっといつも通り僕にタッチしてくるよ」
直生がそう言うと、負けずに遥生も
「俺は夏芽に捕まったことなんてないから、初めて俺を鬼にするために俺にタッチする」
止まっている2人に向かって夏芽が全速力で向かってくる。
さあ、どっちを鬼にする? 夏芽。
夏芽は鬼にする方を決めてタッチしようと走りながら手を伸ばした。