いつも側にいてくれたね
「遥生、僕の気持ちを打ち明けるよ。本当の気持ち」
「ああ。嘘は付くなよ、直生」
直生は静かにそして嘘のない目で俺に話し始めたんだ。
「僕はね、夏芽のことが大事なんだ。誰よりも一番大切なの。それは小さい頃から一つも変わっていないよ。夏芽が幸せに笑っていてくれることが望みなの」
そんなことは俺だって同じだよ。
本当は俺の側で夏芽が幸せになってくれたらいいのにって思うけど。
「でもね、僕は夏芽とはずっと幼馴染でいたいんだ。それ以上でもそれ以下でもない。夏芽のことは大好きだし、愛おしいと思ってる。でもそれは男女の好きじゃないんだよ」
「直生、お前何言ってんだよ。意味が分からねぇよ。一体何が言いたいんだよ」
「夏芽が好きになるなら、夏芽に告白してきた坂野くんでもいいって思うんだ。夏芽が幸せになってくれるならね」
「直生はそれでいいのかよ! 俺は納得できねえぞ」
「じゃあ、遥生はどうなの? 夏芽のことどう思ってる?」
「俺・・・俺は。 夏芽のことが、好きだよ」
直生は俺の夏芽に対する気持ちを聞いて安堵の表情を見せた。
「やっと言ってくれたね、遥生。僕はずっとそれを聞きたかったんだ」
「俺は。俺も夏芽のこと好きだけど。俺に遠慮するなよ、直生。遠慮されるのが一番嫌なんだ。大嫌いなんだよ、そう言うの」
「うん、遠慮はしないよ。これからは邪魔者を夏芽に近付けないようにする。そして遥生と夏芽が幸せになれるように全力で応援するだけだよ」
ほらな、俺が夏芽を好きだって言った途端にこの返事だ。
「なあ直生、どうして俺にそんなに気を使うんだよ。夏芽は俺じゃなくて直生のことが好きかも知れないだろ。何も分からないじゃないかよ」
「ううん、今の夏芽は誰のことも特別には思っていないと思うよ。だからだよ。僕は夏芽の気持ちが遥生に向くようにするんだ。たとえ夏芽に嫌われたって、そうしなきゃならないんだ」
「ふざけんなよ、直生! 俺は・・・」
俺の言葉に少し語気を強めて直生が被せてきた。
「遥生! もうこの話はおしまいだよ。僕たちの気持ちは伝え合った。それでもういいだろ」
そう言うと直生は部屋のドアを閉めてしまった。