いつも側にいてくれたね
私と直生の噂は休み時間になるたびに騒がれて、直生の彼女がどんな子なのかって他のクラスの子が私を見に来たりしていて。
「ちょっと、高田さん!」
私のことを見に来ている人の中からヒステリックな声で私を呼ぶ声が聞こえた。
その声の方を見ると、入学式の時に直生をかっこいいと言っていた田所さんが、廊下から私を睨みながら手招きしていた。
こ、怖い。
見なかったことにしよう。
私はくるっと体の向きを変えて廊下を背にした。
「入るわよ。ね、高田さん! あなた前に言ったわよね」
私の席まで田所さんが来て、そんなことを言った。
これは、無視できないよね。
私は覚悟を決めて、上手く笑えていないだろう笑顔を作り田所さんに顔を向けた。
「どうしたの、田所さん」
「どうしたのじゃないわよ。あなたと直生くんが噂になってるの。1組でも大騒ぎよ」
「ああ、そうなんだ。おかしいね、私と直生はお付き合いしていないのに」
笑顔でそう答えたことが田所さんを怒らせてしまったみたい。
「嘘ばっかり。幼馴染とか言っていつもいつも直生くんと一緒にいるし。直生くんは誰かに告白されても全部断ってるって聞くし。誰が見ても2人は付き合ってるじゃない」
もう愛想笑いは限界。
心の中でそう思った時に直生が私のクラスに入って来た。
「田所さん、夏芽を責めないで。本当に僕たちは付き合ってないから。どうしてこんな噂が流れたのか分からないけど、僕の言うことを信じてくれる?」
直生は焦るようなそぶりも見せず、笑顔で田所さんに注意してる。
直生、その笑顔は反則だよ。
これじゃ田所さんの他にも直生ファンが増えるだけだって。
『きゃぁぁ! 今の湯川くん見た?』
『なにあの超イケメン!』
ほら、私のクラスにも直生ファンができちゃった。
田所さんを見ると少し頬を赤くしていて、
「本当に直生くんは高田さんと付き合っていないのね。信じるわ。高田さんも早く言いなさいよ。誤解しちゃったじゃないの」
はい? 私、最初に付き合ってないって言ったよね。