いつも側にいてくれたね
この前は直生から遥生のことが好きかって聞かれて、今度は遥生から直生のことを好きかって聞かれて。
「なんなのよ、遥生も直生も! どうして同じ質問してくるの。私は遥生も直生も好きだもん」
「なぁ夏芽。その”好き”はどんな”好き”なんだよ」
私が恋愛対象の好きじゃないって言ったら、今度は直生にも好きな人がいるんだよって遥生が言うの?
2人ともそうやって私から離れていくの?
2人とも私の知らない人のことが好きなの?
「直生にも好きな人がいるの?」
「は? 直生にも、ってなんだよ。夏芽にも好きなヤツがいんのかよ?」
「私じゃないよ。遥生でしょ。遥生に好きな人ができたんでしょ」
「はあ? いつ俺に好きな人ができたって・・・待てよ、もしかして直生か? 直生が夏芽にそんなこと言ったのか? あいつ」
遥生は何か思いついたことがあったようで、部屋から出て行こうとした。
もしかして直生のところへ行くの?
直生からは遥生に好きな人ができたことを聞いたことは内緒にしておくように言われてるんだ。
「遥生!! 待って。行かないで。ここにいて」
私は遥生の服の裾をギュッと掴んで遥生が部屋から出て行かないように引っ張った。
「離せよ、夏芽」
「イヤだ。行かないで遥生。ちゃんと私から説明するから」
「なんなんだよ、お前ら」
そう言いながら遥生は直生のところへ行くのを諦めて、また私の隣に戻ってきてくれた。
そして、私と同じように自分の膝を抱えて体育座りをした。
「で? 直生が何を夏芽に言ったんだよ。直生には言わないから本当のことを話せよ、夏芽」
どうしよう。
直生から聞いたことを言ってしまったら直生を裏切ることにならないかな。
「そうだよな、夏芽。きっと直生も俺には内緒にしておくように言ったんだろ。だいたい想像はつく」
やっぱり双子だな、お互いをよく理解してる。
「ごめん、遥生」
「でもさすがに俺が誰を好きになったのか、までは直生は言ってないよな? 夏芽は聞いてないんだろ?」
「うん」
「俺に好きな人ができたって直生から聞いて、それで夏芽は気になったってことなのか?」
「うん」
「わかったよ、夏芽。俺の好きな人のこと教えるよ。その代り、それを聞いても夏芽は今まで通りの夏芽でいてくれるか? それができなかったら俺は教えない」
私、遥生の好きになった人のことを知りたくてここに来たのに。
その相手の人のことを聞いてしまっても今まで通りでいられるのかな。
きっと遥生が好きになった人に嫉妬する。
いつまでも側にいてくれていると思っていた遥生が遠くに行ってしまうのはイヤだ。
それでも遥生が好きになった人のことを聞きたい。
聞きたい私と聞きたくない私が頭の中で葛藤していたけど、心を決めた。