いつも側にいてくれたね
「今日の夏芽、すっごく可愛いね。向こうでナンパされないように気を付けてよ。ま、僕が守るけど」
直生に可愛いって褒められて嬉しい。
「直生、ありがとう。とっても嬉しい」
直生に向かってお礼を言いながら微笑んだ。
「なっ、夏芽。その顔はダメだよ。お願いだから僕以外には見せないで」
「は? 今、可愛いって言ってくれたじゃない。なによ、この顔のどこがダメなのよ!」
直生ひどい! なんだか遥生みたいなこと言ってる。
「いや、そうじゃないんだけど。 あーーっ!! でもやっぱりダメ」
「もう、ばか直生」
いつもは遥生にしかばかって言わないけど、直生も遥生と同じだよ。
私はさっさと靴を履いて直生の家から1人で行こうとした。
「ごめんって。僕はかわいいって意味で言ったんだ。夏芽、待ってよ」
直生は本当に私が1人で行ってしまうと思ったのか、私の手を取って引き留めた。
直生の言葉に悪口なんて入っていないのは知ってるもん。
ちょっと拗ねるふりをしただけなのに。
「もう夏芽の手は離さないよ。このまま一緒に行くから、覚悟して」
「えっ、ちょっと直生」
直生は私の手を握ったまま歩き出した。
「1人で行かないから大丈夫だって。手、手を離して、直生ってば」
「ダメ。夏芽は危なっかしいからこのままだよ。それに僕のことばかって言ったから絶対に離さない」
「なによ、その罰ゲームみたいなの。ばか」
直生に向かってまたばかって言っちゃった。
それでも本気じゃないのは伝わっているみたいで、直生は笑っていた。
その直生の笑顔を見て、私も直生とこんな風に言いあえたことが嬉しくて笑った。