いつも側にいてくれたね
ややこしい噂 *夏芽*
私と直生が遥生のクラスに向かっている時、知らない人が直生に声を掛けてきた。
「湯川、ちょっと進路指導室に来てくれないか」
直生は訝しげな顔をしてその人を見ている。
「そんな怖い顔するな。そもそも湯川が昨日までの回答期限だったものを提出していないんだぞ。口頭でもいいから先生に話せ」
あ、この人は遥生の学校の先生なんだ。
そして直生を遥生と勘違いしているみたい。
「あのっ、彼は遥生ではありま・・・」
「分かりました。すぐに行きます。先生について行きますから」
私がこの先生に人違いしていることを教えようと思ったのに、直生は私の口を手で塞いでその先を言わせなかった。
そして、遥生になりきった。
「えっ? 直生?」
直生は私から手を離し、
「遥生の教室はこの上の階だから夏芽は先に行ってて。僕も話しが終わったらすぐに行くから。遥生の側で待ってて。必ずだよ」
直生は先生に聞こえないように小さい声で私にそう言うと、人違いしている先生について行ってしまった。
ええっ。
直生、何を考えているの?
1人階段の踊り場に取り残された私は途方に暮れた。
そうだ、早く遥生のクラスに行こう。
そして直生の不可解な行動を遥生に教えなきゃ。
1年F組だったよね。
どこかな。