いつも側にいてくれたね
「夏芽、僕は分かっているから。大丈夫だから。ね、だから泣かないで」
「私、泣いてなんかないよ」
「そんな顔しないで、夏芽」
私、涙なんて出ていないし悲しくなんてないもん。
悲しくなんて。
どうして直生は私の気持ちが何でも分かるの。
直生にも遥生にも私の気持ちなんて言ったことがないのに。
私が遥生のことを好きだって、どうして直生は分かるの。
「な、おき・・・どう、して。私、わたし」
言葉が上手く出ない。
何かを喋ったら涙が出てきてしまう。
「夏芽、大丈夫だから。何かの間違いだから。だから泣かないで」
そう言って直生は私の泣き顔を包み込むように抱きしめて皆から隠してくれた。
「夏芽、とにかく遥生を探そう。本人に会って確かめよう」
「うん。そうだね」
直生には廊下で待っていてもらい、衣装から着替え髪もシニヨンを作り直して、私たちは1年F組の教室を後にした。
「あれ? あの子。さっき髪を下ろしていたし衣装を着ていたから見間違えてたのかな。湯川くんと一緒にいた子もシニヨンだったし、あんな感じの服を着ていたかも」
「さっきはあの2人は付き合ってないって否定していたけど湯川くんのお兄さんとあの子が付き合ってるんじゃないの」
「そうだよね、あの2人が手を繋いで歩いてたんだね。今だって私たちの前で抱き合ってたもん」
「そっか。そうだよね、湯川くんにはホストの衣装を着てもらってたはずだもん。やだ、私たち湯川くんとお兄さんを間違えたのかもね」
こうして今度は直生と私の噂ができあがった。