いつも側にいてくれたね
遥生の誤解 *遥生*


文化祭で俺のクラスは仮装写真館という、なんとも集客できないような催しをしている。

案の定、朝から客なんて殆ど来なくて。

苦肉の策で何故か俺が衣装を着させられて外に放り出された。


何で俺がでかい看板持って広告塔やらなきゃならねーんだよ。

しかも、ホストみたいな服まで着させられて。

俺、頭おかしいヤツになってねえか。

とりあえず門の前に立っていれば目立つし客も来てくれるだろう。

でもな、こんなところ夏芽には見られたくないんだよな。


「あの、それに書いてある仮装写真館ってどこにあるんですか?」

おお、早速お客さんだ。

「教室棟の3階です。1年F組なんですけど、分かりますか?」

お客さんには丁寧に返事しろって言われたから、直生の真似して話してみた。

ははっ、この話し方するの夏芽のデート相手に嘘ついた時以来だな。

思い出しておかしくなった。

「きゃあ、その笑顔かっこいい」

「ね、一緒に写真撮ってもらえませんか?」

「写真撮るなら仮装写真館まで行きましょう。案内しますよ」

俺はこの5人の女子グループを引き連れて教室へ向かった。

教室に着くと客が1人もいなくて、俺のクラスの企画は惨敗らしかった。

「おい! 客連れてきたから撮影準備して」

5人も客を連れてきてやったんだぞ、感謝しろよお前ら。

「はい! いらっしゃいませ」

「どの衣装を着て撮影しますか」

衣装チームが5人の客を奥へ連れて行った。

「あの、私たちあの人と一緒に撮影したいんですけど」

客の女が俺を指している。

「もちろんOKですよ。ねー、湯川くん! お客さんたちが着替え終わるまでそこにいてね」

あー、面倒だな。


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