いつも側にいてくれたね
「あ、夏芽ちょっと待って。着信」
直生はポケットから着信で震えているスマホを出して画面を私に見せてくれる。
「遥生からだ。夏芽、遥生と直接話してみる?」
そう言って直生は私にスマホを持たせた。
しかも、通話ボタンを押して繋がってしまっている。
「えっ、え、直生・・・」
『おい! 直生!! お前いまどこにいるんだよ。夏芽となにやってんだよ』
うわっ! 遥生の声大きい。
しかも怒ってて怖い。
『直生! おい! 直生!!』
遥生と話すのが怖いから直生にスマホを渡そうと思ったら、いつの間にか直生が私から10メートル離れていて。
直生は遠くから「話して」とジェスチャーしている。
ひどいよ、直生。
遥生がスマホ越しにずっと何か叫んでいるから覚悟を決めて返事をした。
「もしもし、遥生?」
『はぁ? 夏芽か? なんで直生の・・・。なあ夏芽、お前ら2人で何してんだよ』
「なに、って。何もしてないよ。遥生こそ、何してるのよ」
『俺は何もしてないだろ。っつーか、電話じゃ伝わらないから、どこにいるのか教えろよ、夏芽』
遥生が私たちに会いに来るの?
遥生の彼女も、一緒に来るの?
「い、やだ。会いたくないもん。見たくないもん」
「ふざけんなよ、夏芽。すぐ行くからどこにいるのか言え!」
私はそれに返事することなく直生の所に駆け寄ってスマホを直生に押しつけた。
「遥生がね、凄く怒ってるの。直生が話して。遥生が怖い」
直生は渋々スマホを耳に当てて遥生と話してくれた。
「遥生、夏芽が怖がってるよ。なぜ遥生が怒っているの?」
直生は冷静に遥生を諭す。
『怒ってるって。別に怒ってないけどさ。あーっ、とにかく会って話したい。直生たちは今どこにいるんだよ』
「えーっと、外にあるイベントを掲示している看板の前にいるよ」
『分かった。すぐに行くからそこから離れるなよ、いいな』
「うん。待ってるよ。遥生、冷静に夏芽と話して。ちゃんと素直に気持ちを伝えて」
なっ、なんで直生は私たちのいる場所を遥生に言っちゃうの。
しかも私と話せって。
私、遥生に何を言われちゃうの。
もうこれ以上は限界だよ。