いつも側にいてくれたね
「直生、どうして。私どうしたらいいの」
「遥生が来たらちゃんと2人で話して。夏芽も遥生も素直にならなきゃだめだよ」
「遥生は彼女と一緒に来るかもしれないじゃない。遥生の長い片想いがやっと結ばれたんでしょ。もう何も言えないよ」
「僕はそうは思わないよ。夏芽は心配しなくても大丈夫だから」
直生と話している後ろから遥生がやってきた。
遥生の方を一瞬見て、隣に彼女がいないことに安心したけど、まだ遥生が怒っているように見えて遥生に背中を向けてしまった。
「夏芽! なぁ、夏芽」
「直生、どうしよう。遥生のこと見れないよ」
「うん、分かったよ。夏芽は僕の後ろにいて」
そう言って直生は私を後ろに隠してくれた。
「直生、夏芽を隠してんなよ。ちゃんと話を聞かせろよ」
「まずは遥生。どの話が聞きたいの? その後で僕たちも遥生に聞きたいことがあるんだ」
私も早く遥生と遥生の彼女のことが聞きたい。
遥生が何て言うか怖いけど、ちゃんと聞かなきゃ。
そう思いながら直生の後ろに隠れて遥生の言葉を待っていたんだけど、遥生は私と直生のことを口にした。
「お前たちが付き合ってて仲良さそうにしてたって、さっき教室でクラスの奴らから聞いたんだよ。どう言うことだよ、直生」
「そっか。あの子たちそんな風に僕たちを見ていたんだ。そりゃ僕と夏芽は仲が良いよね。幼馴染なんだから当然でしょ」
「そっ、そうだけど。教室で抱き合ってたとか、手を繋いでたとか、俺だって夏芽と幼馴染だけど。そんなこと」
さっきまで怒りながら話していた遥生の声がトーンダウンしたように感じる。
「僕と夏芽はそれだけだよ。どうして抱き合っていたのかは夏芽から聞いて」
直生は横にずれて私のことを遥生の前に押し出して、そのままどこかへ行ってしまった。
「えっ、ちょっと待って直生!」