いつも側にいてくれたね
「夏芽?」
「なっ、なによ遥生」
「何も見てないから部屋に入れてよ。俺いつまでここにいればいいの」
私はとりあえずさっき脱いだパジャマをもう一度着て、そーっとドアを開けた。
「入るよ、夏芽。ってかさ、俺が来るの知ってて裸になってるってさ。家族みんな家にいるのに、夏芽は大胆だな。あははっ」
そう言って遥生が笑ってる。
「違うもん、そんなんじゃないもん。遥生のばか!」
私は遥生の胸を軽く叩いて反抗した。
遥生は私の手を握って叩くのを止めさせると、手を握ったまま
「なあ夏芽。絶対にあんな姿を他のヤツに見せるなよ。もちろん直生にも。絶対だからな」
「なっ直生は突然入って来ないもん。だから見られることなんて絶対にないもん。遥生だけでしょ、ドアもノックしないで入ってくるのは」
「ははっ、どの口がそれを言うかな。でも、ごちそうさま」
「はるきーーーー!!」
もう、遥生ってこんな感じだった?
ほんとに恥ずかしくなる。
「ごめんよ、夏芽。えーっと、そんなことを言いに来たんじゃないんだった」
「うん。何の話?」
「さっき直生から修学旅行のしおりを見せてもらったんだけどさ、夏芽のクラスのも見たいなって思って」
秋になると私たちの学校の1年生は修学旅行に行く。
行き先は生徒たちの多数決で決定した北海道。
「私のクラスのしおりね。いいよ」
修学旅行のしおりをカバンの中から取り出して遥生に渡し、一緒にそれを見ていたんだけど。
「なあ、このスケジュールだと夏芽と直生が一緒に行動できないよな。だめだろ、そんなの」
「それは仕方ないよ。そもそも直生とはクラスが違うんだし。それともなに? 私と直生が仲良くイチャイチャしていたらいいの?」
「ばっ! なに言ってんだよ夏芽。違うよ。そうじゃなくてさ。直生が側にいないと夏芽が迷子になるだろ」
私が迷子になるってさ。
遥生は一体私のこと何歳の子供だと思ってるのよ。
「私は直生がいなくてもちゃんと何でもできます! もう大人なの」
遥生はしおりのページをめくり、そこで目と手がピタッと止まった。