いつも側にいてくれたね


学校に着くとクラス毎にバスに乗るから直生とはここから別行動。

北海道ではクラス別に観光する場所が決まっているから他のクラスと観光場所で合流する確率は低いんだよね。

直生のしおりと私のしおりを比べたら最終日の夜に宿泊するホテルに入るまでは旅行中に会えないスケジュールだったの。

「夏芽、何かあったらすぐに連絡してね」

「うん。直生ありがとう。また後でね」

いつも側にいてくれる直生と別れて、私は自分のクラスのバスに向かった。

バスの隣の席には綾乃。

私と綾乃はガイドさんの話なんてちっとも聞いていなくて、ずっと恋バナをしていたんだ。

「ね、夏芽。夜まで聞くの我慢しようと思ったんだけどさ。やっぱり早く聞きたくって」

「何を?」

「遥生のこと。遥生と付き合うことになった経緯は聞いたけどね。どうして夏芽が遥生を選んだのか、聞きたい」

綾乃は小学校の時からずっとお友達で、もちろん遥生と直生のことも良く知ってる。

私と遥生、直生がとても仲が良いのは小学校から一緒の友達はみんな知ってるんだけど。

小学校から一緒の友達は私が遥生と直生のどちらと付き合うのか、それとも全然違う人と付き合うのか、ずっと話題だったんだって。

「えーっとね。私は2人とも大好きなの。最初はね、その好きって感情は幼馴染の好きだったの」

「うん。そうだよね、中学の時まではそんな感じだったよね。それがどうして遥生を選んだのかなって」

私が遥生を選んだ理由? そんなこと考えたことないな。

「私ね、そんなこと意識したこと無かったの。直生はいつもずっと優しいし、遥生は・・・分からないな」

「へ? 遥生に対してのどこが好きとか、無いわけ?」

「うーん。遥生はいじわるなんだよね。優しいんだけど、いじわる」

確かにそう。

遥生は毒舌だし、なんでも遠慮なく言ってくるし、この前だってキスされるのかと思ったらはぐらかすし。

「あははっ、夏芽、それって本当に遥生のこと好きなの?」

「うん、それでも遥生のことが好きなんだ。なんでだろうね」

「そっかー。私はね、遥生も直生も夏芽のことを大好きなんだって分かってたよ。小さい頃から一緒の友達もみんなそう思ってた」

「そうなの? みんなそんな風に思ってたの?」

「その直生は夏芽と遥生が付き合うことになったきっかけを作ったんだよね?」

「うん。直生は私と遥生のことを応援してくれてるよ」

綾乃は直生だって私のことが好きなはずなのに、どうして遥生を応援したのか分からないって言う。

直生が私に対しての好きは、小さい頃から一緒にいるから。

ずっと兄弟姉妹のように育ってきたから。

それだけだと思ってたんだ。


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