いつも側にいてくれたね
修学旅行2日目はグループ別行動の日。
私たちのグループはホテルの前でタクシーを待っていた。
タクシーを使うグループが他にも何組かいて、すぐに来ないタクシーを並んで待っている時のことだった。
私のスマホに遥生からメールが来た。
遥生には旅行のしおりを見せていたから今日の班別行動も把握していて。
≪夏芽、今日はぜっっったいに浮気すんなよ。なんなら綾乃とだけしゃべってろ≫
そのメールを読んでいる私の顔がにやけていたみたいで、綾乃に遥生からのメールを覗かれてしまった。
「えぇっ! 遥生ってこんなこと言うキャラだった? 嘘でしょう」
「やっ、やだ! 綾乃、見ちゃった?」
咄嗟にスマホを隠したけど遅かった。
「これは確かに遥生のこと好きになるかもね。あの性格の遥生がねぇ。すごいギャップだわ」
もう恥ずかしい。
近くには同じ班の永井くんと中島くんもいて、綾乃に何事かと聞いてくるし。
「あのね、夏芽が彼氏にすごく愛されてるって話」
「あー、俺たちも聞いたよ。高田さんの彼氏って1組の湯川の双子の弟なんだろ」
「そうなの、直生とそっくりなんだよ」
綾乃が同じ班の2人に教えなくてもいい情報を言っているから顔が熱くなるよ。
「でもさ、俺たちは1組の湯川と付き合ってるとばっかり思ってたよ。高田さんって湯川とすっげー仲いいよな」
そんな風に永井くんが言うと中島くんもうなずいている。
私と直生が付き合っていると言う噂は完全に消えた訳じゃないのかな。
「直生は、幼馴染だから。いつも一緒にいるのはそれだけだから」
私は直生のことを考えて、少し冷たい言葉で2人に言った。
直生に好きな人ができた時、私との噂が足かせになってしまう。
そんなのダメだもん。
それにまだ完全に消えていない私と直生の噂を早く消したかった。
私だって直生の恋を応援したいんだよ。