いつも側にいてくれたね
私たちの通っている中学校の近くにある公立の高校。
同級生の多くは隣の高校に行くのが当たり前だと思っていたから、私は遥生が違う高校に進学すると言ったことが理解できなかった。
「遥生、夏芽には話さなくていいだろ、まだ決まった訳じゃないし。大体受験して合格できるか分からないんだぞ」
「俺は合格するよ。自信しかない」
「ね、ねえ2人とも何の話をしてるの? 遥生が別の高校に行くって、どうして?」
「俺たちが塾に行ってたのは知ってるよな、夏芽。俺も直生も私立の高校に入るつもりだったんだ。それなのに直生はこの前塾を辞めて、私立は受験しないってさ。なんでか分かるか?」
「おい、遥生! 余計な事言うなよ。僕が私立に行かないのはお父さんもお母さんも納得してくれただろ。それだけだよ」
「・・・本当は俺だってさ」
遥生の小さな声が私の耳に届いた。
遥生も本当は別の高校に行きたくないんだって分かったよ。
でも先に直生に言われてしまったから、もう言えなくなってしまったんだね。
直生と遥生の両親は教育に厳しい人で、2人を有名な大学へ行かせたいんだろうな。
それくらい、中学生の私でもわかるよ。
「遥生、どこの高校を受験するの?」
「遠いよ。電車で通うんだ。いいだろ、電車通学だぞ」
「そうなんだ。遠い学校なんだ。でもさ、部活終わってお家に帰ってきたら一緒に遊べるよね」
「さあな、どうなんだろうな。俺も分からないよ」
そして1月
遥生は見事に私立高校に合格して、私と直生とは違う学校の制服を着ることになった。