いつも側にいてくれたね
「ふっ、ふぇっ・・なお、き。怖かったの。すごく怖かったの」
私は直生に抱きついて声を出して泣いた。
「夏芽、もう大丈夫だから。ごめんね、一緒にいてあげられなくて」
直生は一緒にいなかったのは自分のせいだと言っているの?
だって修学旅行だよ、私と直生は違うクラスなんだし、ずっと一緒になんていられないのは分かってることだよ。
私は直生の胸の中で首を振った。
「なお、き。ごめんね。私いつも直生を頼ってしまう。直生に甘えてしまう」
直生は私の背中を優しくトントンしてくれてて。
「それ、夏芽はいつも言うけどさ。僕は夏芽を守りたいんだよ。僕がそうしたいんだって、何回も言ってるよね。いい加減分かってよ」
「直生。本当にごめんね。ありがとう。いつもいつもありがとう」
それ以上直生は何も言わず、背中をさすってくれていた手を私の頭に移動させて、お母さんが赤ちゃんにそうするように愛おしく撫でてくれた。
直生のおかげで気持ちが落ち着いてきたから、直生に抱き着いていた手を離して直生の顔を見上げた。
「もう大丈夫? 夏芽」
「うん。もう大丈夫」
「じゃあ、何があったか話してくれる? 転んだだけじゃないんでしょ。危険な目に合わなかった?」
私は本当のことを言った方がいいのか、嘘をつき通した方がいいのか分からなくて。
「夏芽、隠し事はしないで。1人で不安にならないで、ちゃんと話して。いつまでも待ってるから、ね」
直生は私が話せるようになるまで待っていてくれる。
直生はいつもそう。
一緒にいなくても、側にいなくても、ちゃんと私を守ってくれているんだよ。