嫌いな君の気持ちが知りたい

 その直後、チャイムがなると同時に国語教師の塚原が入ってきた。私は面倒なことに巻き込まれないことが確定し、ほっとした。机にかけているリュックから現代文の教科書とノートを取り出した。

『えー、もう授業なの』
『マジだりぃ』
『次、塚原だからこのままギリまで喋ってようと』

 近くにいる、コンドウ、エンドウ、サイトウの心の声が聞こえた。うるせえよ。こっちだってダルいし、今日も聞かなくていいことばかり聞いて疲れてるんだよと私は思った。そう思っても私の心の声は誰にも聞こえていない。塚原が教室に入ってきても、みんな急いで自分の席に戻る気配はない。それぞれの会話を終わらせてから自分の席に戻っている。私も仕方なく、開いたままだった文庫を閉じ、そして、それをバッグに入れた。
 
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