嫌いな君の気持ちが知りたい
「はい、戻ってー」と塚原は平坦な声で言った。
塚原は、腹が出ていてボタンがはち切れそうなYシャツに紺色のパンツを履いている。そんな体格でまだ20代後半だし、非常勤講師で、常に弱腰だから、みんなから舐められている。
「つかっちゃん、来るの早すぎー」とレイカのでかい声が後ろから聞こえてきた。
「座って。座って」
塚原が右手で座れのジェスチャーをしながらそう言った。
「座って。座って」と私の後ろから声が聞こえた。後ろを振り向くと、後ろの席のカノウは立ち上がっていて、塚原と同じジェスチャーをしていた。
一瞬、カノウと目が合ってしまい、なぜか微笑んだ表情を私に送ってきたから、私は、眉間に力を入れ、カノウのことを見つめたあと、姿勢を元に戻した。
そして、何人かの一軍男子が教室の数カ所で、立ち上がり、カノウと同じように「座って。座って」と言って同じジェスチャーをし始め、クラスは一気に爆笑した。