窓に咲いた、小さな花火大会
姿を現したのはみかんだった。
「食えよ」
勇輔は、それだけしか言わない。
「え……」
「何も食べないよりは、いいし。下痢とかそういう症状があるんならダメだけど、みかんくらいなら食えるだろ」
「でも勇輔んとこの商品でしょ……?」
「親に言ったら、念のためいろいろ果物詰めて、持ってけって言うから」
勇輔の親御さんがそこまで気を遣ってくれるのは嬉しいけれど、なんだか申し訳ないな。
それでも、受け取っておこう。確かに何も食べないよりはずっといいし。
「ありがと……。じゃあ、いただきます」
わたしは、みかんの皮を向いて一切れを口に入れる。
その一切れが、みずみずしさを広げた。
二切れ目、三切れ目と食べ続ける。
最後の一切れを飲み込んだ瞬間だった。