アリンコと佐藤くん
第四章 きらわれるためのデート!
1 芙美ちゃんの作戦
「いい方法って……?」
芙美ちゃんの言葉に、あたしは思わず目を見張る。
「アリンコ、あのヤンキーの誘い受けな! しっかり一日デートすんの!」
「えええええ?」
あたしが、佐藤くんと一日デート?
「だけど、あたしと佐藤くんは、カレカノでもなんでも……」
うろたえるあたしの前に、芙美ちゃんはビシッ! と、ひとさし指を立ててみせた。
「落ち着いてアリンコ。ただデートしろって言ってんじゃないの。とにかくその日は一日なにがなんでもアリンコのペースをつらぬくの!」
あたしのペース……って?
ポカンとしているあたしに、芙美ちゃんは、あのねぇ、と前置きして。
「話をひととおり聞いて思ったんだけど、アリンコ、あのヤンキーの言うことに従いすぎなんだよ。強引にゲーセン連れてかれたり、勉強教えてってたのまれたりしたんでしょ?」
「でも、あれは――」
あたしも楽しかったから、別によかったんだけど。
けれども、芙美ちゃんは、とにかく最後まで聞いて! とあたしの話をさえぎった。
「あいつ、アリンコがなんでも自分の都合に合わせてくれると思って調子にのってんだよ。だから、今度はさ。アリンコのペースにあいつを巻きこむの!」
「ど、どうやって?」
「カンタンなことよ。アリンコ、あのヤンキーとは全然好きなものがちがうでしょ? ファッションも、行きたいところもみーんなアリンコの自由に決めて、ありのままのアリンコを見せるの。そしたらあいつ、自分とは合わない! って、今後近づいて来なくなるわよ」
ふふん、と芙美ちゃんは笑った。
なるほど……確かに芙美ちゃんの言うとおりかも。
あたしは『もこフレ』のグッズとか、フリルやリボンのついたパステルカラーのかわいらしい服に、いろんなスイーツや甘~い飲みものが好きだけど、佐藤くんは、クールなロックコーデや、苦いコーヒーが好みだもんね。
ふだんは制服だし、佐藤くんもあたしの服装については今までそんなに気にならなかったかもしれない。
だけど、あたしの私服とか見たら、うわブリッコ! って引かれちゃうかも……。
でも、いっそのこと、そうやってきらわれたほうが、佐藤くんのことキズつけないですむのかな。
それなら――。
『あのね、佐藤くん。今日言ってた話なんだけど、今度の日曜はどうかな? あたし、駅前のデパートでいろいろ見てまわりたいものがあるんだ』
そう佐藤くんにLINEを送ると、すぐに返事が返ってきた。
『OK! じゃ日曜日よろしく!』
佐藤くんのLINEって、いつもこんな感じなんだよね。
スタンプも絵文字もなんにもなくて、そっけないの。
でも、それが佐藤くんらしくって、読むたびにクスッと笑っちゃうんだ。
こういうやりとりも、もうすぐできなくなっちゃうのかな……。
「って、ダメダメあたし!」
今さらなにを迷ってるの?
芙美ちゃんが考えてくれた作戦、あれがいちばんいい方法じゃない!
佐藤くんのことキズつけるくらいなら、それより先にあたしが佐藤くんにきらわれたほうがまだマシだよ。
あたしは部屋のクローゼットを開けて、日曜日に着ていく服を探しはじめた。
「とうとうこれを着ていく日が来たっ!」
クローゼットの奥から引っぱり出して来たのは、お気に入りのブランド『ラ・ピュセル』のジャンパースカートとヘッドドレスのセット。
ライラック色のジャンパースカートの胸元には大きなリボン、袖口やスカートのすそにはフリルがふんだんに使われててすっごくかわいいの。付属のヘッドドレスにもリボンとフリルがたくさんついててステキなんだ。
雑誌でこのジャンパースカートが紹介されてるのを見て、ひと目ぼれしたあたしは、冬休みにお年玉をはたいて購入したの。
試着したとき、店員さんには、
「まぁ、とってもお似合いですよ! まるでおとぎ話から飛び出してきたプリンセスみたいですね」
って言われて、すっごくうれしかったんだけど。
帰ってお母さんに見せたら、
「まあ、七五三みたいねぇ」
って笑われちゃったんだ……。
それ以来、このジャンパースカートは、あたしのつかの間の喜びとともにクローゼットに眠ったままなの。
あたしがこの服着てあらわれたら、きっと、佐藤くんにも子どもっぽいってあきれられるか、笑われちゃうよね。
お気に入りの服を着て行ってきらわれるなんて悲しいことだけど、しょうがない、しょうがない!
もともとあたしと佐藤くんじゃ趣味も好みも全然ちがうんだもの。
今まで佐藤くんがあたしによくしてくれたのは、あたしがチビで、頼りなかったから、ほっとけなかっただけだよね。
でも、これで佐藤くんも、
「ガキのおもりなんてもういやだ」
って、ウンザリするに決まってるよ。
クローゼットの鏡に映った自分の顔は、今にも雨が降り出しそうに沈んでる。
いけない、いけない! こんなことじゃ。
当日は思いっきりおしゃれして、ヘアスタイルもかわいくアレンジして、ありのままのあたしを見せるんだ。
そうしたら、どんなにきらわれたとしてもスッキリするよね。
きっと。
芙美ちゃんの言葉に、あたしは思わず目を見張る。
「アリンコ、あのヤンキーの誘い受けな! しっかり一日デートすんの!」
「えええええ?」
あたしが、佐藤くんと一日デート?
「だけど、あたしと佐藤くんは、カレカノでもなんでも……」
うろたえるあたしの前に、芙美ちゃんはビシッ! と、ひとさし指を立ててみせた。
「落ち着いてアリンコ。ただデートしろって言ってんじゃないの。とにかくその日は一日なにがなんでもアリンコのペースをつらぬくの!」
あたしのペース……って?
ポカンとしているあたしに、芙美ちゃんは、あのねぇ、と前置きして。
「話をひととおり聞いて思ったんだけど、アリンコ、あのヤンキーの言うことに従いすぎなんだよ。強引にゲーセン連れてかれたり、勉強教えてってたのまれたりしたんでしょ?」
「でも、あれは――」
あたしも楽しかったから、別によかったんだけど。
けれども、芙美ちゃんは、とにかく最後まで聞いて! とあたしの話をさえぎった。
「あいつ、アリンコがなんでも自分の都合に合わせてくれると思って調子にのってんだよ。だから、今度はさ。アリンコのペースにあいつを巻きこむの!」
「ど、どうやって?」
「カンタンなことよ。アリンコ、あのヤンキーとは全然好きなものがちがうでしょ? ファッションも、行きたいところもみーんなアリンコの自由に決めて、ありのままのアリンコを見せるの。そしたらあいつ、自分とは合わない! って、今後近づいて来なくなるわよ」
ふふん、と芙美ちゃんは笑った。
なるほど……確かに芙美ちゃんの言うとおりかも。
あたしは『もこフレ』のグッズとか、フリルやリボンのついたパステルカラーのかわいらしい服に、いろんなスイーツや甘~い飲みものが好きだけど、佐藤くんは、クールなロックコーデや、苦いコーヒーが好みだもんね。
ふだんは制服だし、佐藤くんもあたしの服装については今までそんなに気にならなかったかもしれない。
だけど、あたしの私服とか見たら、うわブリッコ! って引かれちゃうかも……。
でも、いっそのこと、そうやってきらわれたほうが、佐藤くんのことキズつけないですむのかな。
それなら――。
『あのね、佐藤くん。今日言ってた話なんだけど、今度の日曜はどうかな? あたし、駅前のデパートでいろいろ見てまわりたいものがあるんだ』
そう佐藤くんにLINEを送ると、すぐに返事が返ってきた。
『OK! じゃ日曜日よろしく!』
佐藤くんのLINEって、いつもこんな感じなんだよね。
スタンプも絵文字もなんにもなくて、そっけないの。
でも、それが佐藤くんらしくって、読むたびにクスッと笑っちゃうんだ。
こういうやりとりも、もうすぐできなくなっちゃうのかな……。
「って、ダメダメあたし!」
今さらなにを迷ってるの?
芙美ちゃんが考えてくれた作戦、あれがいちばんいい方法じゃない!
佐藤くんのことキズつけるくらいなら、それより先にあたしが佐藤くんにきらわれたほうがまだマシだよ。
あたしは部屋のクローゼットを開けて、日曜日に着ていく服を探しはじめた。
「とうとうこれを着ていく日が来たっ!」
クローゼットの奥から引っぱり出して来たのは、お気に入りのブランド『ラ・ピュセル』のジャンパースカートとヘッドドレスのセット。
ライラック色のジャンパースカートの胸元には大きなリボン、袖口やスカートのすそにはフリルがふんだんに使われててすっごくかわいいの。付属のヘッドドレスにもリボンとフリルがたくさんついててステキなんだ。
雑誌でこのジャンパースカートが紹介されてるのを見て、ひと目ぼれしたあたしは、冬休みにお年玉をはたいて購入したの。
試着したとき、店員さんには、
「まぁ、とってもお似合いですよ! まるでおとぎ話から飛び出してきたプリンセスみたいですね」
って言われて、すっごくうれしかったんだけど。
帰ってお母さんに見せたら、
「まあ、七五三みたいねぇ」
って笑われちゃったんだ……。
それ以来、このジャンパースカートは、あたしのつかの間の喜びとともにクローゼットに眠ったままなの。
あたしがこの服着てあらわれたら、きっと、佐藤くんにも子どもっぽいってあきれられるか、笑われちゃうよね。
お気に入りの服を着て行ってきらわれるなんて悲しいことだけど、しょうがない、しょうがない!
もともとあたしと佐藤くんじゃ趣味も好みも全然ちがうんだもの。
今まで佐藤くんがあたしによくしてくれたのは、あたしがチビで、頼りなかったから、ほっとけなかっただけだよね。
でも、これで佐藤くんも、
「ガキのおもりなんてもういやだ」
って、ウンザリするに決まってるよ。
クローゼットの鏡に映った自分の顔は、今にも雨が降り出しそうに沈んでる。
いけない、いけない! こんなことじゃ。
当日は思いっきりおしゃれして、ヘアスタイルもかわいくアレンジして、ありのままのあたしを見せるんだ。
そうしたら、どんなにきらわれたとしてもスッキリするよね。
きっと。