アリンコと佐藤くん
3 心はずむ春の訪れ
そして春休みが終わり、校内の桜が満開になって、地面には桜の花びらでできた、ピンクのじゅうたんが広がりはじめたころ。
あたしたちは新学期を迎えた。
「えーっと、あたしのクラスは……」
ろう下に貼り出されたクラス替えの表をボンヤリとながめていると。
ポンッ、と大きな手があたしの頭にふれた。
「???」
驚いて顔を上げると、
「よっ、アリちゃん。今日からよろしく!」
目の前に立っていたのは、あたしの大好きなひと。
「佐藤くん! ひょっとして同じクラスなの?」
クラス替えの表を食い入るように見つめると、あった!
二年B組のところに「有川 凛子」と「佐藤 虎狼」の名前。
これって、これって、今度こそあたしの見まちがいじゃないよね?
誰か別の佐藤くんじゃないよね!?
「そーだよ。これからはクラスでもいっしょだ」
あたしにほほえみかける佐藤くん。
「わああああい!」
思わず喜びが頂点に達して、あたしはまるでゼンマイじかけのおもちゃみたいに佐藤くんのまわりをかけ回った。
うれしい、うれしい、うれしいなぁ!
「ちょ、ちょっとアリちゃん落ち着けって」
ギュッ、とあたしをつかまえる佐藤くん。
「だって、これからは同じクラスなんだよ? 文化祭も体育祭も校庭の草むしりのときも、ずっと佐藤くんといっしょにいられるもん!」
佐藤くんは、困ったように自分のひたいに手をやって。
「文化祭や体育祭はともかく、どうして校庭の草むしりなんだよ。他にもっと華やかなイベントあるだろうが」
と、あたしにツッコミを入れた。
「えへへへ……」
もちろん、華やかなイベントのときにいっしょにいられるのはうれしい。
でも、ひとりではたいくつだったり、めんどうだなって感じるときにも、好きなひとがとなりにいてくれたら、たちまちその時間は楽しいひとときに変わるもの。
これから一年、いろいろなときを佐藤くんといっしょに過ごしていきたいな。
芙美ちゃんとは二年になってからクラスが離れちゃったけど、あたしたちは相変わらずなかよしで、ひんぱんに連絡を取り合っている。
「後輩ができたせいか、美術部でもちょくちょく恋愛相談されることが増えちゃってさー。自分の恋愛はまだ出会いすらないのに、他人のことばっかり応援してると、なんかむなしくなっちゃうのよね」
と、芙美ちゃんは不満をこぼしてるけど。
芙美ちゃんに相談した子たちは、次々に両想いになってるんだって。
芙美ちゃん、めんどうみがいいから。
たくさんのひとに頼りにされてるんだろうな。
そんな芙美ちゃんをステキだなって思うひと、きっと必ずあらわれるよ。
佐藤くんの話によると、宝さんと竜聖さんは、あれから本格的に『モントレ』の活動を再開させて、積極的に練習にはげんでるみたい。
「オレも練習参加してるけど、さいきん宝と兄ちゃんますます距離が縮まって、オレちょっと居心地悪いんだよな。それに兄ちゃん、宝にはヒミツにしてるけど、あいつに捧げるラブソングまで作ってんだよ」
「えーっ、宝さんへのラブソングまで!?」
そんなのマンガやドラマのワンシーンでしか見たことないよ!
「アリちゃんもそーゆーのキョーミある? オレに作ってほしいとか?」
ニヤニヤッと笑う佐藤くん。
そーだなぁ……と、あたしはあごに手をあてて。
「ううん、いい!」
佐藤くんは少し期待をそがれたのか、
「なんでだよ?」
と、たずねてきた。
「だって、そーゆーの佐藤くんには似合ってないもん。どうせプレゼントされるなら、あたし『もこフレ』のグッズのほうがいいな」
佐藤くんは、あちゃーと頭を抱えて。
「またまた『もこフレ』かよ。まったくアリちゃんは、オレと『もこフレ』どっちが大事なんだ?」
「どっちも大事だもんっ!」
どっちもかよ! と、ガクッと落ちこむ佐藤くん。
だけど、前にいっしょに映画に行ったときにもらった、あたしとおそろいのボアボアのマスコット。
佐藤くん、しっかり自分のリュックにつけて持ち歩いてるんだ。
そういうところ、なんかかわいいんだよね。
本人に言ったら怒られちゃうかもだけど!
二年生になって、友だちや周りのひとたちの状況が少しずつ変わっていくなか、あたしにも少し変化が生まれた。
これまで塾や学校の勉強に追い立てられてて、部活に入る余裕がなかったんだけど、この春から家庭科部に入部することにしたんだ。
佐藤くんや芙美ちゃん、宝さんが自分のやりたいことに一生けん命になってる姿を見ていて、あたしも真剣になにかに取り組みたくなったの。
ずいぶん遅めの部活動デビューになっちゃったけど、先輩も同じ学年の子もみんな親切で、いそがしいけれど、充実した毎日をおくってる。
佐藤くんも、
「これで学校でもアリちゃんのおやつ食い放題だな!」
って応援してくれてるんだ。
いっつもあたしの分のおやつまで食べられちゃうのがたまにキズだけど……。
あたしたちは新学期を迎えた。
「えーっと、あたしのクラスは……」
ろう下に貼り出されたクラス替えの表をボンヤリとながめていると。
ポンッ、と大きな手があたしの頭にふれた。
「???」
驚いて顔を上げると、
「よっ、アリちゃん。今日からよろしく!」
目の前に立っていたのは、あたしの大好きなひと。
「佐藤くん! ひょっとして同じクラスなの?」
クラス替えの表を食い入るように見つめると、あった!
二年B組のところに「有川 凛子」と「佐藤 虎狼」の名前。
これって、これって、今度こそあたしの見まちがいじゃないよね?
誰か別の佐藤くんじゃないよね!?
「そーだよ。これからはクラスでもいっしょだ」
あたしにほほえみかける佐藤くん。
「わああああい!」
思わず喜びが頂点に達して、あたしはまるでゼンマイじかけのおもちゃみたいに佐藤くんのまわりをかけ回った。
うれしい、うれしい、うれしいなぁ!
「ちょ、ちょっとアリちゃん落ち着けって」
ギュッ、とあたしをつかまえる佐藤くん。
「だって、これからは同じクラスなんだよ? 文化祭も体育祭も校庭の草むしりのときも、ずっと佐藤くんといっしょにいられるもん!」
佐藤くんは、困ったように自分のひたいに手をやって。
「文化祭や体育祭はともかく、どうして校庭の草むしりなんだよ。他にもっと華やかなイベントあるだろうが」
と、あたしにツッコミを入れた。
「えへへへ……」
もちろん、華やかなイベントのときにいっしょにいられるのはうれしい。
でも、ひとりではたいくつだったり、めんどうだなって感じるときにも、好きなひとがとなりにいてくれたら、たちまちその時間は楽しいひとときに変わるもの。
これから一年、いろいろなときを佐藤くんといっしょに過ごしていきたいな。
芙美ちゃんとは二年になってからクラスが離れちゃったけど、あたしたちは相変わらずなかよしで、ひんぱんに連絡を取り合っている。
「後輩ができたせいか、美術部でもちょくちょく恋愛相談されることが増えちゃってさー。自分の恋愛はまだ出会いすらないのに、他人のことばっかり応援してると、なんかむなしくなっちゃうのよね」
と、芙美ちゃんは不満をこぼしてるけど。
芙美ちゃんに相談した子たちは、次々に両想いになってるんだって。
芙美ちゃん、めんどうみがいいから。
たくさんのひとに頼りにされてるんだろうな。
そんな芙美ちゃんをステキだなって思うひと、きっと必ずあらわれるよ。
佐藤くんの話によると、宝さんと竜聖さんは、あれから本格的に『モントレ』の活動を再開させて、積極的に練習にはげんでるみたい。
「オレも練習参加してるけど、さいきん宝と兄ちゃんますます距離が縮まって、オレちょっと居心地悪いんだよな。それに兄ちゃん、宝にはヒミツにしてるけど、あいつに捧げるラブソングまで作ってんだよ」
「えーっ、宝さんへのラブソングまで!?」
そんなのマンガやドラマのワンシーンでしか見たことないよ!
「アリちゃんもそーゆーのキョーミある? オレに作ってほしいとか?」
ニヤニヤッと笑う佐藤くん。
そーだなぁ……と、あたしはあごに手をあてて。
「ううん、いい!」
佐藤くんは少し期待をそがれたのか、
「なんでだよ?」
と、たずねてきた。
「だって、そーゆーの佐藤くんには似合ってないもん。どうせプレゼントされるなら、あたし『もこフレ』のグッズのほうがいいな」
佐藤くんは、あちゃーと頭を抱えて。
「またまた『もこフレ』かよ。まったくアリちゃんは、オレと『もこフレ』どっちが大事なんだ?」
「どっちも大事だもんっ!」
どっちもかよ! と、ガクッと落ちこむ佐藤くん。
だけど、前にいっしょに映画に行ったときにもらった、あたしとおそろいのボアボアのマスコット。
佐藤くん、しっかり自分のリュックにつけて持ち歩いてるんだ。
そういうところ、なんかかわいいんだよね。
本人に言ったら怒られちゃうかもだけど!
二年生になって、友だちや周りのひとたちの状況が少しずつ変わっていくなか、あたしにも少し変化が生まれた。
これまで塾や学校の勉強に追い立てられてて、部活に入る余裕がなかったんだけど、この春から家庭科部に入部することにしたんだ。
佐藤くんや芙美ちゃん、宝さんが自分のやりたいことに一生けん命になってる姿を見ていて、あたしも真剣になにかに取り組みたくなったの。
ずいぶん遅めの部活動デビューになっちゃったけど、先輩も同じ学年の子もみんな親切で、いそがしいけれど、充実した毎日をおくってる。
佐藤くんも、
「これで学校でもアリちゃんのおやつ食い放題だな!」
って応援してくれてるんだ。
いっつもあたしの分のおやつまで食べられちゃうのがたまにキズだけど……。