拝啓、元婚約者様。婚約破棄をしてくれてありがとうございました。

 夜会でのことを回想していた。弱った……モルヴァン嬢が可愛すぎて集中できない。

「おーいグレイ、まだ終わらないのか?」

 ヤバい! 至急の書類がまだあった。これを終わらせないとレオンも帰れないんだったな……

「すまん。すぐに終わらせるから少し時間をくれ」

 集中して書類に目を通す。


「珍しいな。私は急いでないから慌てなくて良いぞ。それより昨晩のパーティーはどうだった? 盛大だったらしいな」

「あ、あぁ、嫡男のブリュノ殿の婚約者選びも兼ねていて若い子息や令嬢達が多い印象だったな」

「えー。それは行きたかったぜ。うちも母がパーティーをすると言ってたな。令嬢をたくさん呼ぶと言っていたからグレイも来いよー婚活しなきゃ流石にマズイよな……」

「お前は本気を出せばすぐに決まるだろ、一緒にするなよ」

 コイツはモテる! 応援隊もいるくらいだからな。

「一緒だろ。お互い相手がいないんだ」

 はぁっとため息を吐くレオン。選り好みしてるからだろ。

「待たせたな、この書類を届け終わったら帰っても良いぞ」

「グレイ何かあったんだろ? 話なら聞くぞお前の奢りで」

 鋭いヤツだな。


「この前奢っただろう? ここぞとばかりに高い酒ばかり飲みやがって」


 例の本の口止め料として、奢ったのだが遠慮をするということを知らない奴だから高い酒ばかり頼んでいた。


「グレイの奢りだと思ったら余計に美味く感じた。恋の悩みなら私の方が先輩だそ?」

「あぁ、その時は頼むな」


 軽くあしらいレオンと別れた。相談をしたいが、この気持ちは何かと聞かれても答えられん。







 恋の悩み……か。


< 108 / 223 >

この作品をシェア

pagetop