拝啓、元婚約者様。婚約破棄をしてくれてありがとうございました。

「これは?」

「差し入れ? ですわ。応援に来る時は差し入れをお持ちするのでしょう?」

 キョロキョロと周りを見渡すと令嬢から差し入れを渡されている騎士達の姿がある。食べ物だけではないようです。


「閣下がどういった物がお好きか分からなかったので、スイーツ系とおかず系の二種類を用意しましたの。わたくしもシェフ達に混ざって作ったのですよ。形は歪なものもありますが、味は保証します」

「モルヴァン嬢が作ったのか?!」


「作ったと言うか、手伝った。が正解ですわね。たくさんありますので皆さんでどうぞ」


 たくさん作ったので皆さんで召し上がっていただければシェフも喜びますわね。


「……すまない。大変だっただろう。有り難く頂戴するよ」

 ホッと胸を撫で下ろしました。断られたら立ち直れないかもしれませんもの。


「閣下の勇姿を見届けてから図書館へ行きますわね。応援しています」


「……ああ、頼むよ」


 差し入れってこんな感じでいいのかしら? 間違っていません? 


「お忙しい中、お時間を頂いてありがとうございました。大事にしますね」

 ハンカチを胸に抱き、お礼を言いました。

「いや、こっちこそ逆に気を遣わせたな」



 忙しいお方なので、長居は無用ですわね。ぺこりと頭を下げて観覧席へ戻りました。
< 111 / 223 >

この作品をシェア

pagetop