拝啓、元婚約者様。婚約破棄をしてくれてありがとうございました。


「お、お慕いしていますっ」

 ……ドキドキが……心臓が破裂しそうです。閣下が席を立ち私の元に跪いて! 私の近くにいる。ちゃんと答えなきゃ、そう思いました。



「リュシエンヌ・モルヴァン嬢。こんな私だが君の将来を私に預けてくれませんか? 一生大事にすると誓う。一生生活に困らせることもしない。君を悪意から全力で守るし私は一生君だけを愛する。結婚を前提に付き合って欲しい」

 そして手を出してきました。まるでロマンス小説の騎士様のようでドキドキが止まりませんわ。閣下が私を……なんて素敵なんでしょうか。


「はい、わたくしでよければ閣下のお側に……」

 なんとか返事をして閣下の手を取りました。閣下の手も少し震えていました。そっと両手で閣下の手を包むと、とても大きくて温かい手でしたわ。


「この大きな手で一生わたくしを守ってくださるのですね。よろしくお願いしますわ、わたくしの騎士様」


「モルヴァン嬢! 勿論だ!!」



 安心した顔つきで私を見てきました。こんなに大きな体でも手が震えるなんて閣下のかわいらしいところも発見しましたが、閣下には内緒にしておきましょう。


 嬉しくて感動しつつも、急に現実に戻って……(だって使用人たちが遠くでこちらをちらちら覗いているのだもの)

 そこでハッとしました!

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