拝啓、元婚約者様。婚約破棄をしてくれてありがとうございました。
そしてお二人は帰って行きましたが、今後どうなるのでしょうか。リーディアさんはきっかけにすぎなかったのかもしれません。
それにしてもパティの名前すら知らないなんて信じられません! 元婚約者の家族ですのよ?! 名前の一つ覚えられないなんて最低ですわ。
「はぁっ、やっと帰ったか……アルバート殿必死なのは分かるがまさか、パティを出してくるなんてな」
「伯爵も愛人がいるだなんて……誠実そうに見えて人は分からないものですわね」
お母様がお父様に微笑みながら言っていますが目は真剣そのもの……
「さっきも言ったけれど私には居ないからな! 調べてもらっても構わないぞ。私は自他ともに認める愛妻家だし、そんなくだらないことで家族に迷惑をかけない。それに最近では特に愛人を持つ貴族は冷たい目で見られているんだよ! 王太子妃がそういう者たちを毛嫌いしている」
お父様は既婚者なのに人気があるようで夜会で令嬢にダンスに誘われるのだそうです。お父様がダンスに応えるのはお母様がいる時に限るのだそうですわ。変な誤解を受けたくないからだと言っていますが、お母様は愛されていますわね!
(ダンスを断らない理由としては令嬢が傷をついたり、家同士の繋がりを壊す可能性、そして夜会はダンスを楽しむ場所だからです)
「そこは信用していますわ。もしそんな女性がいたら子供達を連れて離縁致しますわ」
……お母様はきっと私達を連れて出て行くわね。
「絶対にない!」
お父様は自信たっぷり言う。一度媚薬を盛られそうになった事があるようで更に警戒するようになり、そういった薬に対応する中和剤を持ち歩いていて、パーティーで飲み物を口にすることは無いのだそうです。
お父様曰く媚薬は酒に混ぜると分からなくなる事があるそうで、特にカクテル、赤ワインは混入しやすいのだそうです。
甘い香りがしても怪しまれないんですって! 最近の媚薬は進化しているようで無味無臭のものがあるようですが、味が濃い方が媚薬としての濃度が高いのだとか……お父様とお母様はそういった(媚薬を盛られる)経験があるからこそ私にも教えてくれましたのよね。
社交界とは恐ろしいですわね。媚薬の話は置いといてこれからの話をする事になりましたわ。
「鉱山はリュシエンヌの慰謝料の代わりに貰ったものだから、名義はリュシエンヌにするかい?」
え! 面倒ですわ。