拝啓、元婚約者様。婚約破棄をしてくれてありがとうございました。
それから恋人期間とやらを得て、あっという間に婚約をして、今度は結婚準備なんだって! あれから義兄様と何回も顔を合わせた。顔は怖いけれど僕たちに歩み寄ってくれる。僕達も義兄様が好きだ。
「へぇ、ハリスは学年で三位なのか? 凄いな、優秀なんだな」
「そうなんです! ハリスは頑張り屋さんなんです」
義兄様が僕達に話しかけてくれるんだけど……
「ハリスやパティに縁談の申し込みが殺到していると聞いたが……」
「うちの子たちは可愛いのでしんぱ、」
「姉様、心配は不要だから義兄様と出かけて来たら? 僕達をダシにしていちゃつきたいの? 見せつけたいの?」
「え?」
「なんで驚くのさ……義兄様が僕達に話を振ってくれるのになんで姉様が答えるんだよ。しかも僕達の自慢をして恥ずかしいったらないよ」
なんで二人とも照れているんだよ……見ているこっちが恥ずかしい!
「お義兄様とお姉様が仲良くて、そんな姿見ていたら私も好きな人と結婚したくなっちゃって、相手が決まらないんだからね! 焦って変な人と結婚したらお姉様とお義兄様のせいだから!」
パティは可愛いからモテるんだけど、姉様が義兄様と婚約したから、僕もそうだけど公爵家と親戚になる。だからどこの誰でも良いというわけにはいかない。
「パティ……変な人だなんてやめてね、お姉様悲しくなってきた」
「……パティ、気になる男が出来たら言ってくれ。とことん調べ上げてやるからな」
二人ともズレている。義兄様は姉様のことをとことん調べたのか? それなら怖いんだけど……
「ハリスもだぞ、変な令嬢には捕まるな。リュシエンヌが悲しむぞ」
「……そうですね」
姉様が悲しむから変な令嬢に捕まるなって……僕だって嫌だよ!
「それと、剣の稽古だが良かったら私が指導するぞ、手っ取り早く実戦に入れば、」
「……いえ。遠慮しておきます」
この前、僕の剣術の稽古を何も言わずにじっと見ていた。先生も緊張して変な空気になったんだ。
義兄様の縁のある地で一週間魔獣退治とか……しかも宿泊先は前陛下のお屋敷って。
「レイ様、お怪我だけは気をつけてくださいね……心配で夜も眠れませんわ」
「リュシエンヌの睡眠を妨害するような事はしないと誓うよ」
パティがもう付き合っていられない。とぼそっと僕に言ってきた。同感だ。姉様が幸せそうだし良いんだけど僕達の姉様なのに! 姉様と二人で出かけることがなくなって正直寂しい……
「そろそろ買い物に出かけたらどうですか? 予約してあるんですよね」
「もうそんな時間? 今度街にね新しい本屋さんが出来るようなの。洋書も並ぶらしいから一緒に行きましょうね、ハリス」
僕とパティにキスをして義兄様と出ていった。新しい本屋か……姉様とのお出かけは久しぶりだ!
「ハリスばっかりズルい! 私もお姉様とお出かけしたいのに」
「頼んでみたら? 姉様喜ぶと思うけど」
「うん! お姉様にドレスを選んで貰うわ」
……姉様がパティのドレスを選ぶと可愛いデザインになっちゃうぞ。パティは姉様のようなドレスが着たいのに。姉様にとって僕達はいつまでたっても可愛い双子だからね。
母様は流石にお揃いの服装を着せるのは諦めてくれた。それだけが救いだ。