拝啓、元婚約者様。婚約破棄をしてくれてありがとうございました。

「……レイ様が紳士すぎて」

 ぼそっと呟くようにリュシエンヌが言った。紳士? 良いんじゃないの? なんの悩みよ。

「ダメなの?」

 チャラチャラしているよりいいわよね?

「もっと、レイ様に触れて欲しいの」

 顔を真っ赤にしてリュシエンヌが可愛くて鼻血が出そうになったわ……

「はしたないって思われちゃうから、こんなこと誰にもいえないから内緒にして」

 私が手を出しそうになったわ! きっと閣下は自分と戦っているに違いないわ! 


「あ、えっと、閣下とは、その、どこまで……」

 キスくらいはしているわよね? お互い好き合っているんだもの。

「手を繋いだり腕を組んだり」

 え? 本気? 


「ハリスとかお父様にはキスできるけど、私から触れたらはしたないって思われそうで……」

「思わないよ。寧ろ喜ぶと思うけれど……」

 紳士すぎるって事? 大事にされているんだと思うけど、大事にしすぎじゃないかしら。リュシエンヌが不安になってるじゃないの。

「そうかな……引かれないかな」

 かっわいい! 恋する乙女ってこんなに可愛いの?! 私も恋がしたい……お父様に勧められている人とお見合いしてみよ。

「まさかリュシエンヌから手を出されたいだなんてことを聞くとは思わなかったわ」

 真面目な子だから、結婚するまでは。って思っているのかと思った。


「え? やだ、そうじゃなくて、もっと触れ合いたいって思ったの。レイ様からしたら私は子供だし、そう言う目で見られてないのかって不安に、」
「我慢しているんだと思うよ? 大切にされているんだよ」

「そう、かな」


 そりゃそうでしょ。婚約パーティーの時、リュシエンヌを壊れもののように大事に大事にしていたのよ。
 美少女と野獣なんて揶揄われていたけれど、二人並ぶとお似合いだったもの!

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