拝啓、元婚約者様。婚約破棄をしてくれてありがとうございました。
「リュシエンヌ、酔いは覚めたか?」
「なんのことですの?」
「酔っているから、その、あんな事を言ったのかと、思ってだな」
あんな事? ってなんですの?
「わたくし何か変なことをいいましたか? レイ様が気に障るような、」
「違う、そうでなくだな、大好きだとか、」
ごにょごにょと口籠もりましたわ。
「本心ですわ。レイ様が好きなので酔ったふりをしてどさくさ紛れに伝えたのですわ」
「そう、か……それなら、良い」
「こういう時ではないと甘えられないと思って……」
急に恥ずかしくなりましたわ。甘えるだなんて……
「それは、いつでも良い。酔ったふりなどしなくても好きな時にいつでも甘えてくれ。その方が嬉しい」
胸が苦しいですわ……レイ様のデレた顔が! 眼福です!!
馬車を待つ間にギュッと腕を抱き締めました。はぁ逞しい腕ですわ……すると頭に温かさを感じました。
「レイ様?」
「すまない、耐えきれずつい」
頭にキスをされたようですわ! 頭じゃなくともよろしいですのに。なんて言えませんわね……でも幸せですわ。
「大好きです。レイ様!」
レイ様の胸に飛び込んだ所で馬車が来てしまいました。残念ですわ……