拝啓、元婚約者様。婚約破棄をしてくれてありがとうございました。
「リュシエンヌちゃん!」
「副隊長様ご機嫌よう」
副隊長様のお顔を見たら先程の令嬢を思い出してしまいましたわ……
「副隊長だなんてレオンで良いのに……」
「そう言うわけには参りませんわ」
殿方を名前呼びするなんて……婚約者はいないとお聞きしましたが、意中の方がいらした場合嫌な思いをされるでしょうし……ってまさかあの令嬢が副隊長様の?! それなら趣味が……よろしくないですわね。
「真面目なところがリュシエンヌちゃんの良いところだね。本題に入ろうか。グレイは急に仕事が入ったんだ。あと一時間ほどかかると思うから執務室で待っていて欲しいと伝言だ。ランチを一緒にとも言っていた」
だからいなくなったのですね。
「それなら図書館に行っていますわ。執務室には大事な書類などもありますでしょう? 許可を得ていても気が引けますわ」
忙しい時のお父様の執務室は書類が散乱していて、片付けたメイドが注意されていましたもの。お父様的には分かりやすいように置いてあったのだそうです。
「グレイはリュシエンヌちゃんを信頼しているから大丈夫だよ。本棚の本は自由に読んでも良いと言っていたよ」
……本棚は気になりますわね。
「どうする? それでも図書館に行くなら送って行くけど」
「……執務室でお待ちしますわ」
「そうしてくれると助かる。行こうか?」
副隊長様の後ろを歩きついて行く事になりました。
「リュシエンヌちゃん、大丈夫? 変な人に絡まれたりしてない?」
変な人……と言われてあの令嬢を思い出した。
「……問題ありませんわ」
先程の令嬢のことは伏せておいた。何かあったらレイ様に相談しようと思ったからです。
「騎士団員達に声を掛けられたりしてない? 騎士団員の中には軽いやつもいるから気をつけてね」
騎士団の方にはナンパな方もいると言うことに驚きを隠せませんでしたわ。執務室に送ってもらいお茶を出していただきました。
本棚を見るとその人が分かると言いますが、レイ様が博識なのはこの読書量なのでしょうか。兵法などの本もたくさん並んでいますわね。
「それじゃあ、仕事に戻るよ。何かあったら外に衛兵が待機しているから声を掛けてくれ」
案内してくださったことに礼を言って遠慮なく執務室で待たせてもらいます。レイ様の執務室は綺麗に片付いていました。几帳面なんですね。また、一つレイ様を知ることができました。