拝啓、元婚約者様。婚約破棄をしてくれてありがとうございました。
「あ、姉様……浮かれてるね」
「ハリス、またそんな事を言って……私の事を揶揄っているんでしょう?」
「……本気で言ってるんだけどね」
ハリスは最近私とレイ様のことを揶揄ってくるようになりました。ハリスの成長が見られるようで嬉しいですわ。
「ねぇこのワンピースどう? 似合っている?」
ハリスの意見を聞いてみましょう。
「あー、うん。似合っているよ。いつも色味を抑えた服を選んでいるのに。あ、浮かれているからか。何かあったの?」
「……可愛い?」
チラッとハリスを見るとハリスは呆れているように言いました。
「あー、うん、良いと思うよ……可愛い。義兄様をどうしたいんだと聞きたいよ」
意味がわかりませんわ。
「今日が最後の練習だから思い切り応援しようと思って……」
「あれ、今日だった? それなら僕もいけば良かったな……剣術の稽古があるんだよ。今更キャンセル出来ない。残念だ」
「レイ様に教えて貰えば良いのに」
「ヤダよ! 身体がどれだけあっても足りないよ。義兄様と同じ人間だと思わないでほしいね」
同じ人間でしょう? 私の弟は人間以外の物ではないと思うのだけど……
「違うから! 義兄様が普通じゃないんだよ」
ハリス最近しっかりしすぎではなくて? 心配になってきたわ。
「確かにレイ様は人間離れした素敵な人よね」
「そっち?!」
「厚い胸板、がっちりした腕、どれをとっても素敵よね……それなのに本を読んでいる時の知性溢れる眼差し。あのハスキーで素敵なお声も、」
「ねぇ、早く行ったら?」
「もう、聞くだけ聞いといて聞いてくれないの?」
「聞いてないからね?」
え? そうだっけ? なんの話をしていたのかしら?! レイ様のお話でしたわよね?
「あ、そうそう。今日ね沢山サンドイッチを作ったの。ハリスとパティの分もあるのよ」
「いつもご苦労なことだねぇ」
「楽しいわよ。レイ様も喜んでくださるし。今日はマフィンも焼いたの。帰ってきたらみんなで食べましょうね」