拝啓、元婚約者様。婚約破棄をしてくれてありがとうございました。
「……あら? アデールはどうしたのかしら? バスケットはあるのに……」
騎士団の練習場で何かあるはずないですわよね? お花摘み……? なら、私を待って行くはずだし……嫌な予感がしますわ。 だってこんな事初めてですもの。
「私が探して来ましょうか? 別れてからそれほど時間も経っていませんし」
ジョニーに提案されたので、お願いね。と言いました。ジョニーがアデールを探しに行ってすぐに練習が始まりました。レイ様の姿を見ていますが、アデールもジョニーも帰ってこないのでそわそわしてしまいます。
「遅いわね。やっぱり何かあったのかしら……」
練習終了まではレイ様の元へは行けませんし……相談出来ませんもの。困りましたわ。アデールとジョニーの二人が気になって、そわそわしてしまい見学に集中出来ません。
「はぁっ……」
と大きく一呼吸すると後ろから声をかけられました。一番後ろの席に座っていましたので驚いて、きゃぁ。と声をあげてしまいましたわ。
きゃぁ。といっても声援にかき消されてしまいますわ。
「ちょっと、あなた! 出入り禁止と言ったでしょう! あの生意気なメイドといいあなた、家でどういう教育を受けていますの!」
……また子爵令嬢ですか。良い加減にしてほしいですわね。応援隊のボス的存在と言っていましたが“自称”でしたのよ。
出入り禁止と言われましたが、この令嬢に命令権などありませんのよね……
副隊長様は人気があるので、副隊長様の応援隊の方に特に厳しく罰則という名で退場させたり出入り禁止にしたりとやりたい放題なのですって。
子爵令嬢が好き放題している事に騎士団として家に抗議をしたらしいのですが、そうすると副隊長様への行為がエスカレートしたのだそうですわ。
偶然を装って待ち伏せしたり、副隊長様の持ち物をこっそり盗んだり、副隊長様とお話をする令嬢に嫌がらせをしたり……などなどです。
これはレイ様から聞きましたので私はルール違反などしておりませんもの。堂々として良いのだそうですわ! それに副隊長様に特別な思いを持っておりませんもの。言いがかりですわよね。