拝啓、元婚約者様。婚約破棄をしてくれてありがとうございました。

「まぁ。レオン様ったらそんなに怖いお顔をして……わたくしはただそこの令嬢とシオン様の逢引き現場を目撃しただけですのに……」


「手足を縛られた状況で逢引きとは物騒だな。君はそういうプレイが好みなのか?」

「……レオン様になら何をされてもよろしいですわ」

 ふふっと笑うソレル子爵令嬢が薄気味悪く映る。


「伯爵令嬢でありグレイソンの婚約者を連れ去ったのはお前達で間違いないな?」


「連れ去っただなんて! 逢引きですわ! ねぇシオン様」

「そうです。私とリュシエンヌは密かに愛し合う仲なのです。リュシエンヌ、演技は良いから私のところへ」

 シオンがリュシエンヌに向かって手を出そうとするがその手を叩く。



「リュシエンヌ、」

 ぶつぶつと何かを言い目が虚でいつものシオンではない。それにリュシエンヌの胸がどうとか! そういえばリュシエンヌに抱きついていたな、こいつ。




「これは騎士団内部で起きた不祥事だ」
「そうだな。騎士団の中でこんな事件が起きたなんて世間にバレたら困るよな」

 

 公にするとリュシエンヌが傷物にされた令嬢となってしまい社交界から追放となり、私との婚約も無くなってしまう。しかしこの二人を罰さない訳にはいかないのだ。

 騎士団には鉄の掟がある。いや騎士として自分の行いに責任を持たねばならない。

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